佐久間文庫 序

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世はまさに宇宙開発の時代となり、人類の英知はその住む地球上はもちろん、さらに広く遠く大宇宙へと伸びつつあります。この時にあたり、数学は人類の文化発展に対して大きな役割を占め、それに貢献して参りました。

かえりみれば、わが山形県は徳川時代に和算の非常にさかんなところでありました。そして、安島直円と会田安明の二大数学者を輩出致しました。その一人会田算左衛門安明については、昭和41年9月生地山形市において盛大な150年祭が行なわれ、数々の記念行事が持たれました。このよき時に、会田の弟子の直系である佐久間家より貴重なる和算書1276冊と1包が本学に寄贈されましたことは、本学にとって誠に感謝とよろこびに堪えないところであります。

この図書は、わが国数学史上極めて貴重な資料でありますので、「佐久間文庫」と名づけ、永くたいせつに保管し、研究調査に資する所存であります。聞くところによれば、すでに本蔵書は本学に保管されて以来わずか1年あまりの間に、数多く学界で調査引用されているとのことで、よろこびこれにまさるものはありません。

ここに、佐久間文庫の目録を作成印刷するにあたり、寄贈者佐久間森一郎氏に深くお礼を申し上げますとともに、本文庫が学術研究にいつそう活用されますことを願ってやみません。

昭和42年11月

山形大学学長      .

細 谷 恒 夫

出典:『佐久間文庫目録』昭和42年11月,山形大学